Towards a New Classification of Tele-Information Services
-Author-
The New Media Reader(目次39), pp.575-582 - Original Publication-
Intermedia 34(1):16-21.January 1986.
-Another related themes-
-Further Reading-
Aarseth, Espen. "Textonomy: A Typology of Textual Information." Cybertext: Perspectives on Ergodic Literature, 58-75. Baltimore: Johns Hopkins University Press, 1997.
Ziegfeld, Richard. "Interactive Fiction: A New Literary Genre?" New Literary History 20:341-372. 1989.
- Historical Background-
1980年代は、現代(2020年代)と比べ、世界中で権威政治が行われていた。
イギリスの小説家であるジョージ・オーウェルは、「1984」という小説の中で、政府が個人のプライバシーを侵害し、常に支配者の利益のために嘘をつくことができるテクノロジーを利用した権威政治を描写し、多くの注目を集めた。
著者たちは、このような事態を避けるための一つの方法として、コミュニケーションにおいて権力関係を分類することを本論の中で行っている。
-Introduction-
本論では、さまざまなデジタル・メディアの社会的役割を考察し、個々の感覚とは根本的に異なる視点から新しいメディアを調査し、より厳密に定義した構造にこれらのメディアを置いている。
そこでは採用された基本的な技術によって、通信システムが提供するサービスのカテゴリーが決まるわけではないと述べられている。
ここではシステムをソフトウェアの要素を、サービスセンターの役割を果たすものと、個人の役割を果たすものとして概念化することで、システムの4つの分類を示している。
-本文-
-序論-
筆者は以下のように述べている。
ジョージ・オーウェルのようなテクノロジーを利用した権威政治のシナリオのリスクを回避するために、社会は少なくとも、人間のコミュニケーションという脆弱な地形における権力の位置と関係がどのようなものであるかについて、明確で単純なイメージを自由に持てるようにしておく必要がある。そのために遠隔情報サービスの社会的役割に関するある種の分類を行う。
-1/Allocution(pp576-577)-
Allocutionの概要として以下のことが述べられている。(図1参考)
情報の流れが常に同じ方向である
情報を送る側は無限の情報を自由に持っている
https://gyazo.com/f2f17064a2acda170dcd0d24442083ef
図1:Allocution(pp.576, Fig 39.1)
また筆者はAllocutionの特徴として主従関係、あるいは将軍と兵士、教師と生徒などの関係に似ていると表現をしている。
またCに対してiが一つではなく、Cが中央のリーダーとして、複数の従者が存在するというパターンがある述べている。
-2/Conversation(pp577-578)-
Conversationの概要として以下のことが述べられている。(図2参考)
情報の所有権と情報の処理能力は2つの端末で等しく分けられている(この文章ではそう仮定している)
情報処理に関する選択を情報サービス消費者が選択できる
https://gyazo.com/bf24763c35077a7b311df36b4488ac05
図2:Conversation(pp.577, Fig 39.3)
また本文で理想的なConversationのパターンは、パワーバランスのとれたものであるが、現実では2つの「情報レベル」が同じでないことが多いと述べられている。
また実例として、瞑想を含む一種の「Self Conversation」だけでなく、個人使用のために保存されたすべての情報(電子ファイルなど)との「Conversation」も含まれると述べている。
- 3/Consultation(日本語訳:相談)(pp.578-579)
情報サービスセンターを表す”C”が,情報サービス消費者のリクエスト(下図の点線)に応じた情報の配信のみを行うパターンを"Consultation"と呼ぶこととする.”C”は無尽蔵な情報の所有者だが,いつ,どのような主題の情報を配信してもらうのかは,末端”i”が決める.
https://gyazo.com/8e3d2dd5910414acb9a3a11257658456
図3: コンサルテーション(Consultation)(pp.579, Fig 39.6)
Consultationの内容は,図形や絵の情報に限らない.音声による相談の例として,時間,天気,交通情報,医療情報などの電話問い合わせシステムがある.これらはすべて,テレテキストや一部のビデオテックスアプリケーションと同様に,遠隔で行われるConsultationの例である. -4/Registration(日本語訳:登録)(pp.579-580)
情報の流れる方向が反転する場合を,筆者は,Registrationパターンと呼んでいる.Registrationパターンでは,情報センターはもはや情報の発行を行わず,情報を収集する.
Registrationパターンの現代的な遠隔アプリケーションの例:
電話世論調査(tele-opinion polling),遠隔通信計測(tele-metering),テレアラーム(tele-alarm),衛星による地球測位,住民登録センター(civil registration centers),通信社(news agencies)など
Registrationの特徴として,情報は,周辺に位置する情報サービス消費者が所有し,プログラムは,情報サービス提供者である”C”が制御する.
なお,情報センターが周辺の消費者に対してConsultationしているとも言えるため,以前の研究では,どちらのパターンにも同じ「consultation」という用語を使用していたが,現在では,混乱を避けるため2つの異なる用語を使用することを提案している.
トラフィックパターンの定義の統合 (pp.580 - 581)
筆者らは,今まで述べてきた4つのトラフィックパターンの定義を1つのパターン表(下)に統合することを試みている.そのために,トラフィックパターンを次の2つの質問に対する答えのそれぞれ異なる組み合わせで示している.
発行された情報の所有者は,情報サービス提供センターか個人の情報サービス消費者か?
情報発行のプログラムを制御しているのは,情報サービスセンターか情報サービス消費者か?
table:表:パターン表
センターによる情報の発行 消費者による情報の発行
センターによるプログラム制御 Allocution(演説) Registration(登録)
消費者によるプログラム制御 Consultation(相談) Conversation(会話)
このパターン表は,法的枠組みを作成する際の基礎となるものである.もちろん,このパターン表は,遠隔情報システムのオペレータやクライアントの利益が法律で保護されるべきかどうかや,どのように,どの程度まで保護されるべきかという問題を解決するものではない.しかし,4つのパターンは,原理的に互いに異なる4つの社会的力関係を指すため、1つの同じ情報トラフィックパターンに従うすべてのサービスには,同様の行動が関連すると見なされることが期待される.
ある種のパターンが規制面で共通点がないとは考えられない.Jens Arnbakが指摘するように,あるパターンに採用される可能性のある法律は,以下に示すように,「近隣の」パターンに採用される法律と重複することが予測されることさえある. 著作権問題は,一般に表の左側の列に限定される
プライバシーの保護は,右側の列に関連している
通常,正式な公的アクセス及び管理手続きが必要である,または適切であるのは上段である
情報の自由な流れは,一般に,下段に属するサービスに対する国家の干渉を最小化することで実現される
箇条書きの内容を下に図示する.
https://gyazo.com/9bc8a697866e55f3136e178fc1faa51b
このようにして得られた体型的なアプローチにより,古い情報サービスと新しい情報サービスの社会的・法的な位置付けが即座に明らかになり,4つの理想化された情報トラフィックパターンのうちの十分近いとみなせる1つに従う.
しかし,現実の多くの情報サービスは,一つのパターンに従って他のものを完全に排除することはできない.そこで,以上の理論を応用してマルチパターンサービス,マルチパターンネットワークの発展,及びこの2つの現象の関係について述べる.
マルチパターンサービス(Multi-pattern Service)(pp.581)
先ほど作成したパターン表は,「理想化された情報サービス」の4つの領域を明確に区分するものであるが,実際の情報サービスの中には,いくつかのパターンがほぼ同時に発生するマルチパターン型が存在する.
筆者らは,最後に古くからある情報サービスの典型的なマルチパターン型の例として「教育」を取り上げている.教師が講義をする時,それは明らかにAllocutionモードである.しかし,生徒が先生に質問したり,教科書を読んだりする時は,Consultationモードである.教師が生徒を試験してその成長を測ろうとするのは,Registrationモードである.そして,生徒同士で話し合うのは,Conversationモードである.この4つのモードはほぼ同じウエイトを占めている.これは,完全な遠隔教育システムにはマルチパターンのネットワークが不可欠であることを意味し,遠隔教育が自分たちの独占領域であると信じている放送局への警告を含んでいる.
マルチパターンネットワーク(Multi-pattern Networks)(pp.581-582)
現在では,同等のウェイトを占める複数のトラヒックパターンが共存する,マルチパターンネットワーク(マルチファンクショナルネットワーク)を構築しようという動きも強くなってきている.そのため,ネットワークや端末機器の技術的な外観だけでは,情報通信サービスの特徴を判断することが難しくなってきている.今後,マルチパターン対応の端末機がますます登場することが予想される.
この論文で示された分析は,社会的なパワー関係にかかっているが,実際には政治的に中立である.パターン理論は洞察力を高め,立法へのより体系的なアプローチを容易にする.しかし,トラフィックパターンの分類が技術的特性に依存しないという事実は,技術開発や技術管理が4つの異なるパターンの相対的なバランスに一定の影響を及ぼさないということを意味するものではないことを認識すべきである.政府は,ある種の技術開発を促進したり遅らせたりすることで,特定の活動に大きな影響を与えることができる.
パターン理論は,政府がパターンに対して中立的な道を歩んでいるかどうかをチェックするための基準を提供する.特に国際放送(international broadcasting)はこの点で大きな責任を負っており,常に積極的な機会を探し求めていかなければならない.しかし,放送局の最大の目標は,他のパターンに対するある種の覇権を獲得しようとする誘惑に負けないようにすることだろう.